企業のAI支出、8月に伸び鈍化——値下げ競争が導入コストを押し下げ
決済企業Rampの調査で、上位企業のAI支出が8月に前月比約10%減。トークン価格の下落が要因とみられ、AI導入のハードルは下がりつつある。
決済・経費管理サービスを手がけるRampが7万社の顧客データを分析したところ、AI活用に最も積極的な上位1%の企業で、8月の従業員1人あたりのAI支出が前月比約10%減の月額7,205ドルとなったことが分かった。背景にあるのはモデル価格competition(競争)によるトークンコストの下落で、企業にとってはAI導入の敷居が下がっている状況だ。
何が起きたか
Rampのデータによると、AI関連トークンの平均コストは1億トークンあたり0.68ドルまで低下した。3月のピーク時は1.15ドルだったため、半年で4割以上安くなった計算になる。OpenAIとAnthropicが相次いで値下げを実施した結果、顧客企業がより低コストな旧世代モデルへ切り替える動きが進んでいるとみられる。
Ramp顧客のうち8月にAI製品へ支出した企業の割合は56%で、依然として過半数を占める。ただし全米規模で見ると状況は異なり、米国勢調査局の調査ではAI採用率はわずか22%にとどまっている。AIに支出する企業のうち、オープンウェイトモデルを利用しているのは6.4%のみだった。
トークン単価の下落が意味すること
Rampのエコノミストは、「競争がAIをより利用しやすくし、企業の支出を削減している」と分析する。値下げそのものは市場全体のAI利用を広げる要因になり得る一方、巨額のインフラ投資を続けるハイパースケーラー側からすると、投資回収のシナリオが崩れかねない懸念材料でもある。
上位1%企業の支出減は、成長の踊り場なのか、それとも本格的な調整局面の始まりなのかは現時点で判断が分かれる。8月は多くの企業で夏季休暇シーズンにあたり、一時的な鈍化という見方もできるためだ。
読者への影響
AI導入を検討する企業にとっては、トークン単価の継続的な下落は朗報だ。従来なら高コストで見送っていた用途にも、より手頃な価格でAIを組み込める余地が広がっている。一方で、投資家やAI企業の経営陣にとっては、支出の伸び鈍化が今後の収益モデルにどう影響するか、次の四半期のデータが注視材料になりそうだ。
アップデート:モデル選択の内訳も変化
THE DECODERが伝えたRampの追加データによると、最先端モデル(Opus・Fable・Sol)が占めるトークン消費量の割合は9月上旬時点で45%まで下がり、8月時点の53%から大きく縮小した。企業が高額な最先端モデルの利用を制限する内部方針を導入し、より安価な標準モデルへ切り替えている動きが数字に表れている。
プロバイダー別の採用率では、Anthropicが43.8%、OpenAIが39.8%となり、いずれも前月からわずかに増加した。両社とも利用企業数自体は伸びている一方で、企業が最先端モデルへ支払う意欲そのものは頭打ちになりつつある可能性がある。この傾向が一時的な調整か、より長期的な支出パターンの変化かは、今後数ヶ月のデータで見極める必要がある。