GPT-6 Astraが83年間未解読だったナチス・エニグマ暗号を10時間で解読
Bloombergの開発者がOpenAIのGPT-6 Astraを使い、1941年のドイツ軍暗号通信を解読。83年間解けなかった82文字のメッセージの内容を突き止めた。
Bloombergのプロダクト開発者Carter Leffen氏が、OpenAIのGPT-6 Astraを使い、1941年にドイツ軍が発信した82文字の暗号無線メッセージを解読した。このメッセージは83年間にわたり未解読のまま残されていたものだ。
エニグマ暗号を10時間で突破
ドイツ軍が使用したエニグマ暗号機は、1日ごとの設定だけで約159京通り(159,000,000,000,000,000,000通り)の組み合わせが存在する。Leffen氏はGPT-6 Astraを軸に複数の専門タスク向けAIエージェントを組み合わせ、アーカイブ資料の分析、解読用検索プログラムの実装、候補結果の検証をそれぞれ担当させた。
突破口となったのは、同じ日に解読された別のメッセージに含まれていた都市名「Rosenow」だった。この既知の単語を手がかりに設定候補を絞り込み、さらにエニグマ機の基本的な仕様である「1つの文字は暗号化後に同じ文字にはならない」という制約を使って、多くの設定パターンを除外した。この一連の作業に要した時間は10時間だったという。
「本物」の証拠となった無線手の誤字
解読されたメッセージには、無線オペレーターの打ち間違いとみられる誤字「BTTE」(正しくは「BITTE」、英語で「please」に相当)が含まれていた。この種の人為的な誤りは、メッセージが後から捏造されたものではなく実際の通信記録であることを裏付ける材料になっている。内容は行軍ルートの報告と即時回答を求めるものだった。
検証はまだ途上
Leffen氏によれば、実際の解読作業そのものよりも、成果を公開するウェブサイトの構築に99倍の労力を費やしたという。使用したコード・データ、そして動作する3Dエニグマ・シミュレーターはすべて公開されているが、歴史資料としての最終的な裏付けには専門家による検証が別途必要だとしている。
今回の事例は、複数の専門エージェントを役割分担させて長年未解決だった問題に取り組む手法として、AIの実用的な応用可能性を示す一例となった。
アップデート:Anthropicのモデルも別のメッセージを解読
その後、別の開発者Jack Willis氏が9月21日、AnthropicのClaude Opus 5を使ってエニグマ暗号の未解読メッセージをもう1件解読したことが明らかになった。Willis氏は、メッセージに残る特定の将校の署名パターンを手がかりに設定を絞り込む手法を採用したという。
暗号解読の専門家Frode Weierud氏は、この一連の成果について「人間の研究者なら数週間から数ヶ月かかる作業を2日で達成した」と評価している。エニグマ暗号のメッセージのうち、現時点で未解読のまま残っているものは7件、そのうち平文が既知でありながら暗号文との対応が未確定のものは1件だという。
OpenAIのAstraとAnthropicのClaude Opus 5という異なる開発元のモデルが、それぞれ別の担当者の手で同種の歴史的暗号解読に成功したことは、AIエージェントによるアーカイブ研究・分析能力が特定企業のモデルに限った現象ではないことを示している。