Metaの「Muse」、ダウンロード数でChatGPT超えも収益は伸び悩み
MetaのAIエージェント「Muse」がApp Storeで1位を獲得し、初期のダウンロード数・利用者数でChatGPTを上回った。ただし収益面では競合エージェントに大きく水をあけられている。
Metaが投入したAIエージェント「Muse」が、米国・カナダでの初期ダウンロード数と日次アクティブユーザー(DAU)数において、2023年のChatGPTモバイル版の立ち上がりを上回ったことが、市場調査会社Appfiguresの推計で明らかになった。米国のApp Storeでは9月18日、リリースから10日で1位を獲得している。
具体的な数字が示す急成長
Appfiguresによると、Museの米国・カナダにおけるDAUはChatGPTの立ち上げ時を上回るペースで伸びている。世界全体では公開から12日間で累計280万インストールに到達したとみられ、9月8日から18日の期間だけで約110万台のデバイスに到達したという推計もある。従来のチャットボットとは異なり、Museはメール送信や旅行予約、購入手続きなど、ユーザーに代わってタスクを完了する機能を持つ点が特徴だ。
数字の裏にある実態
一方で、ダウンロード数の勢いがそのまま定着利用につながっているかは不透明だ。Appfiguresの分析では、Museの手数料差引後の売上高はリリース後11日間で約2万7000ドルにとどまり、競合するGrokのAIエージェントの同期間の17万5000ドルと比べると大きく見劣りする。ダウンロード数の急伸には、Meta自身が持つ広告ネットワークによる大規模プロモーションが寄与しているとみられ、好奇心による初回インストールが、継続利用や課金にはまだ結びついていない可能性を示している。
Meta対OpenAIの構図が示す意味
MuseはFacebook・Instagram・Threads・WhatsAppといった既存プラットフォームとの連携を強みにしており、利用者の95%がFacebookアカウントを、63%がInstagramアカウントを保有しているという。巨大なユーザー基盤を持つMetaが、単独チャットボットとして広がったChatGPTとは異なる経路でAIエージェント市場に食い込もうとしている構図が浮かぶ。ただし、初速の数字だけでMetaの優位が確定したとは言えず、収益化と定着率が今後の実力を測る指標になる。
【9月25日更新】株価も反応、JPモルガンは「ChatGPT以来の消費者向けAIアプリ」と評価
Museの勢いは株式市場にも波及している。Meta株は月曜日に前日比11%、木曜日には4.5%上昇し、現在は約778ドルまで回復した。3月につけた底値525ドルからの急回復となる。北米のiPhoneでは公開から2週間足らずで180万件のダウンロードを記録しており、JPモルガンのアナリストは「MuseはChatGPT以来、最も広く使われる消費者向けAIアプリケーションになる可能性がある」と指摘した。Metaにとっては、広告収入に依存してきたビジネスモデルを多角化する材料としても注目されている。
一方で課題も残る。Amazonはプライバシー上の懸念を理由にMuseからのアクセスを一部ブロックしており、外部サービス連携には壁がある。また、米国人でMetaによるパスワード管理を信頼していると回答したのはわずか8%にとどまるという調査結果もあり、旅行予約や購入代行といったタスクをAIエージェントに任せることに対する消費者の不安は根強い。ダウンロード数の勢いをどこまで信頼獲得・収益化につなげられるかが、引き続きMuseの実力を測る焦点となる。
【9月26日更新】累計340万ダウンロード、早期アクセスで新機能を先行公開
Museの勢いはさらに加速している。Sensor Towerの集計では、ローンチから2週間で累計ダウンロード数が340万件を突破(Apptopiaの推計では430万件)。初期の日次成長率は55%に達し、ChatGPTのローンチ時(24%)を大きく上回るペースとなっている。米国App Storeでは9月18日以降トップの座を維持し、Google Playストアでも9月19日に首位を獲得した。9月中旬に開催されたMeta Connectカンファレンス以降、日次アクティブユーザーはさらに27%増加したという。
Metaはこの勢いを受けて、新機能の早期アクセスプログラムを開始した。ユーザーがMuseアプリ内で「Can you let the Muse team know I want to be part of the Muse early access program?」と入力するとリストに登録できる仕組みで、複数のAIアプリを併用する「AI関心層」を優先的に選定する方針という。早期アクセスの対象には、Museとビデオ通話ができるデジタルアバター機能、購買パートナーシップを広げたショッピング機能の拡充、Macアプリでのタスク遂行機能の拡張、ウェイクワードと音声コマンドでMuseを呼び出せるAIスマートグラスとの統合が含まれる。
Metaは既存の巨大ユーザー基盤と広告ネットワークを使った大規模プロモーションにも力を入れており、ダウンロード数の急伸を後押ししている。競合のOpenAIやAnthropicが「フロンティアのペースを追う」と語っていた最中に、単独チャットボットではなく既存プラットフォームとの統合を武器にするMuseが存在感を強めている構図が改めて浮き彫りになった。