Microsoft が Copilot を大幅に再設計し、8月に新しいエージェント機能「AutoPilot」をリリースする。OpenAI と Anthropic が推し進めるスーパーアプリ戦略に Microsoft も参入することで、AI アシスタントの競争軸が「会話」から「実務自動化」へと明確にシフトする。

再設計の全容

Microsoft の新 Copilot は、消費者向けアプリとエンタープライズ向けアプリを統一し、単一プラットフォーム上で展開される。低迷していた Copilot Podcasts や Copilot Labs といった実験的機能は廃止される一方、AutoPilot エージェントという背景タスク自動化機能が新たに導入される。

AutoPilot の役割は、ユーザーの指示に基づいて自動的にスケジューリング管理やメール要約といった日常業務を実行することにある。ユーザーが明示的に指示しなくても、パターン認識や過去のデータから優先度を推測し、タスク実行を提案・実装する仕組みである。

Executive の Jacob Andreou は「うまくいかなかった部分を削除し、実用的な応用に再焦点化した」とコメントしており、機能の絞り込みと集中化が重視された再設計であることが明確に示されている。

エンタープライズへの 2.5 billion ドル投資

Microsoft は同時に、AI エンジニアをエンタープライズ顧客内に直接配置するプログラムに 25 億ドルを投じることを発表した。この投資は、OpenAI が企業向けにカスタマイズしたモデルを提供する戦略や、Anthropic が API ベースのエンタープライズ統合を推進する動きと軌を一にしている。

新 Copilot の主眼はコンシューマーではなくエンタープライズにある。AutoPilot の導入により、エンタープライズ内での人間の作業時間を削減し、組織全体のワークフロー効率化を実現することが目標となっている。

料金体系と利用可能時期

AutoPilot などの高度なエージェント機能については、基本の Copilot 契約を超えた追加購読料が発生する。無料または基本プランでは従来のチャットボット機能のみが利用可能な一方、エンタープライズグレードの自動化には段階的な料金体系が適用される。

本格的なリリースは 2026 年 8 月を予定しており、現時点ではベータアクセスやパイロットプログラムの段階に留まっている。

業界への波及と読者への意味

OpenAI、Anthropic、Microsoft による「スーパーアプリ」戦略の競争は、AI アシスタント市場の成熟を象徴している。単なる文章生成や質問応答ではなく、ユーザーの業務プロセス全体を担う自動化エージェントが主流になることで、LLM の価値提案そのものが変わる。

開発者にとっては、これらの API を使用した自社システムへの AI エージェント統合が標準化される道が開ける。その一方で、エンタープライズユーザーは複数ベンダーのエージェント機能を組み合わせるマルチベンダー戦略を検討する必要が生じるであろう。

アップデート:Home・Code・Autopilot の3分割と課金体系の刷新

Microsoft は2026年9月25日、Copilot アプリを「Home」「Code」「Autopilot」の3セクションに正式に分割すると発表した。7月時点の再設計計画からさらに踏み込み、旧称「Scout」だった常時稼働エージェントは「Autopilot」として独立し、料金体系も定額制から使用量ベースへと大きく転換する。

Autopilot は OpenClaw を基盤に稼働

Autopilot は OpenClaw の技術基盤を採用し、インスタンスごとに専用のクラウドコンピューター・ワークスペース・ストレージ・アイデンティティを割り当てられる。Teams のチャンネル監視やサプライヤー審査といった継続的なタスクを、ユーザーがオフラインの間も自律的にこなす設計だ。Teams・Outlook・ドキュメント内で「@Copilot」とメンションするだけで起動できる。

「Home」はチャットと協業機能(旧 Cowork)を統合した入り口で、Office アプリとの連携を強化。10月には非公開プレビューとしてメール・カレンダー・Teams・タスクを一画面にまとめる「Today」機能も追加される。「Code」は GitHub Copilot と同じ基盤技術を使い、非開発者でも自然言語でアプリやダッシュボードを構築できる機能で、Copilot Managed Runtime のサンドボックス環境で安全に実行される。

課金は「ユーザーサブスクリプション」と「使用量ベース」の二本立てに

料金体系は、日常的なチャットや文書作成に対応する定額の「ユーザーサブスクリプションライセンス(USL)」と、Cowork・Code・Autopilot など高度なエージェント作業に適用される「使用量ベース課金(UBB、Copilot Credits)」に分かれる。ChatGPT Enterprise が一定量を超えると従量課金になる仕組みに近い。あわせて、組織の AI 支出を管理する「FinOps for AI」も導入され、管理者が支出ポリシーを設定し、利用者がリアルタイムで消費量を確認できるようになる。

展開スケジュール

Home と Code は9月以降、Frontier プログラムを通じて順次ロールアウトを開始。Autopilot は月末に非公開プレビューが拡大される。Teams 内での「@Copilot」呼び出しも月末までに非公開プレビューが始まる予定だ。

7月時点では「8月に本格リリース」としていたが、実際には9月下旬の発表を経て段階的な展開に切り替わった形となる。OpenAI・Anthropic に続きスーパーアプリ化を進める Microsoft にとって、Autopilot の使用量ベース課金への転換は、AI エージェントの利用コストが企業のIT予算に直接跳ね返る新たな局面の始まりを意味する。