Nvidiaが、オープンソースAIモデルの共有・配布プラットフォームを運営するHugging Faceを約129億ドルで買収すると、9月3日に正式発表した。内訳は買収価格119億ドルに、従業員の留任インセンティブとなる最大10億ドルのストックプログラムを加えた計129億3000万ドル。規制当局の承認を経て、2027年上半期のクローズが見込まれている。Nvidia史上最大の買収案件となり、これまでの最高額だった2020年のMellanox買収(69億ドル)を大きく上回る。

モデル配布の「アプリストア」を握る狙い

Hugging Faceは、開発者がオープンウェイトのAIモデルやデータセットを検索・共有・デプロイできるハブとして、業界で広く使われてきたプラットフォームだ。モデルの重み配布からライブラリ「Transformers」まで、開発者ワークフローの中核に食い込んでいる。

Nvidiaにとってこの買収は、単なるモデルホスティング事業の獲得にとどまらない。TechCrunchが報じたところでは、オープンウェイトモデルはまだ全企業の6%、ソフトウェアエンジニアの2%程度しか本格採用していないが、推論基盤としての利用は急拡大している。すでにHugging Face上でモデルを提供するFireworksは1日あたり40兆トークンを処理しているとされ、Nvidiaはこの成長市場のトラフィックとデータへのアクセスを確保する狙いがあるとみられる。

OpenAI・Googleの自社チップ開発への対抗軸

この買収は、OpenAIやGoogleが独自の推論チップ開発を進める中でのNvidiaの戦略転換とも位置づけられる。Stripeの共同創業者は「トークンが企業にとって中心的な通貨となり、計算資源をいかに効率的に活用するかが経済的な優劣を決める」と述べており、モデル配布層を押さえることは、GPU需要そのものを左右する布石になり得る。

Hugging Faceの買収に先立ち、Nvidiaは推論最適化企業Poolsideを60億ドルで、決済大手StripeはAIモデルルーティング企業OpenRouterを70億ドルでそれぞれ買収したと報じられており、オープンウェイトAIのエコシステムをめぐる大型買収が短期間に相次いでいる。

創業者は昨年の出資提案を拒否していた

Hacker Newsでの議論では、Hugging Faceの共同創業者(Julien・Thomas・Clem各氏)が昨年、企業価値79億ドルでのNvidiaからの5億ドル出資を断っていた経緯が指摘されている。約1年半で評価額が129億ドルまで積み上がった末に、今回は完全買収に応じた形だ。Hugging Faceは年間経常収益ベースで黒字化しているとされ、プラットフォームとしての希少性よりもブランドとエコシステムの掌握に価値を見出した買収だとの見方も出ている。

読者への影響

Hugging Face上でモデルを公開・利用している開発者にとっては、プラットフォームの中立性がどう維持されるかが今後の焦点になる。Nvidia傘下となった場合、自社GPU向けの最適化が優先されたり、競合チップベンダー(AMD、Google TPUなど)向けの配布に制約がかかったりする可能性も指摘されている。買収がクローズすれば、モデル配布のインフラ層がGPUベンダーに統合される初の大型事例となり、他のクラウド・チップ企業による同様の垂直統合が続く可能性もある。

アップデート:Nvidiaが正式発表、1800万人の開発者が利用するプラットフォームを掌握(2026-09-04)

Nvidiaは9月3日、Hugging Faceの買収を正式に発表した。プラットフォームの規模はこれまでの想定以上に大きく、300万超のAIモデル、50万のデータセット、100万個のアプリケーションをホストし、1800万人の開発者と20万社以上の企業が利用しているという。

Jensen Huang CEOは、買収後もHugging Faceは「オープンプラットフォームとしての地位を維持する」とし、「Nvidiaのコンピュートの使用が強制されることはない」とハードウェア中立性を改めて強調した。Nvidiaはすでに500以上のモデルと250のオープンデータセットをHugging Face上で公開している。

一方でTHE DECODERの分析では、OpenAIやGoogleなど主要AI企業が独自の推論チップ開発を進める中、Nvidiaがモデル配布層という「玄関口」を押さえることで、オープンウェイトモデルを使うクラウド・大学・政府機関などの需要をGPU販売に結びつける狙いがあると指摘されている。取引のクローズは2027年上半期を予定しており、それまではプラットフォームの実運用に大きな変化はない見通しだ。