OpenAIが「知性の時代の産業政策」を公表——国民ファンドや自動安全網を柱に
OpenAIが「知性の時代の産業政策」と題した政策提言を公表した。公共ウェルスファンドの創設、AI雇用代替と連動する自動安全網など5つの柱を掲げ、AIの恩恵を全国民に分配する構想を打ち出した。
OpenAIが2026年4月6日、「知性の時代の産業政策(Industrial Policy for the Intelligence Age: Ideas to Keep People First)」と題した政策文書を公開した。AIが経済や雇用に与える影響が現実のものとなる中、その恩恵を特定の企業や富裕層だけに集中させず、広く国民全体に分配するための政策の枠組みを提示した内容だ。
公共ウェルスファンドと課税構造の見直し
最大の目玉が「公共ウェルスファンド(Public Wealth Fund)」の創設提案だ。OpenAIなどAI企業からの拠出を原資とする国家管理のファンドを設立し、すべての米国市民がAI経済の成長に直接参加できる仕組みを描く。ファンドはAI企業や関連産業に長期・分散投資し、収益を市民に還元する設計だ。
課税面では、AIによる自動化の進展で賃金に課す給与税の収入が細ることを見越し、課税ベースをキャピタルゲインや法人所得に移行させることを提案している。自動化労働に関連した税(いわゆるロボット税に類する考え方)の導入も選択肢として示した。現在、社会保障の財源の多くを給与税に依存している構造が、AI普及によって揺らぐことへの対処策だ。
経済指標と連動する自動安全網
特徴的なのが「自動安全網(Automatic Safety Net)」の構想だ。失業率やAIによる雇用代替を示す指標があらかじめ設定した閾値を超えると、失業給付・賃金保険・現金支援などが自動的に発動し、状況が改善すると自動的に縮小する仕組みを想定している。従来の立法プロセスを待たずに迅速に支援を届けられる点が設計上の特徴だ。
インフラ整備とAIリスク対応
電力網の近代化とAI対応人材の育成も柱の一つに挙げられている。AIデータセンターの整備を軸とした国内再工業化(reindustrialization)で数十万人規模の雇用を創出し、地域経済の活性化につなげる方針を示した。
AIのリスク対応についても踏み込んだ記述がある。自律的に複製可能な危険なシステムが「容易に回収できない状態」に陥るシナリオを公文書で認めた上で、政府を含む多者間の調整体制を構築する必要性を訴えた。OpenAIがこうした危険シナリオを正式な政策文書に明記したこと自体、異例と言える。
今回の提言はあくまで「アイデア」として提示されたものだが、AI開発を主導する企業が国家レベルの富の再分配や税制改革にまで踏み込んだ意見を発信したことは、今後の政策議論に大きな影響を与えそうだ。