米国家安全保障局(NSA)が Anthropic の最先端 AI モデル「Mythos Preview」を採用していることが、複数の情報筋の話として報道されました。サイバーセキュリティと諜報能力をめぐる米政府内の綱引きが、新たな局面を迎えています。

Mythos へのアクセス、限定40機関

Anthropic は Mythos を「Project Glasswing」と呼ぶプレビュープログラムを通じて、厳選された40の機関のみに提供しています。米国防総省(Pentagon)は以前、Anthropic をセキュリティリスクに分類し、政府ベンダー関係をブロックしようとしていましたが、NSA による採用は米政府内のパワーダイナミクスを浮き彫りにしています。

「offensive cyber 能力」が焦点

Anthropic は、Mythos の能力が「offensive cyber capabilities の面で危険すぎる」として、広範なリリースを拒んでいます。この制限的なアプローチは、Pentagon の抵抗と米政府の採用要望のはざまで、同社が取り続けているバランスを示しています。

英国情報機関も利用

Anthropic の Mythos は NSA だけでなく、英国の情報機関も AI Security Institute を通じてアクセスしています。国家レベルの戦略AI として、複数国の公式な利用が進んでいます。

Amodei CEO による白宮との協議

Anthropic の CEO Dario Amodei は最近、より広い政府への展開について White House 関係者と会談しています。同社は一方で、大量監視と自律兵器の開発には協力しないという立場を保ち、技術提供の倫理的な線引きを模索しています。


アップデート: Pentagon の「supply chain risk」指定を受けながら White House が供給を承認

事態は新たな展開を見せています。5 月末時点での報道により、以下が明らかになりました。

Pentagon のリスク指定——しかし White House が政治判断で承認

Pentagon は正式に Anthropic を「supply chain risk(サプライチェーンリスク)」に指定しています。この指定の根拠は、以前 Anthropic が「あらゆる適法な用途(any lawful purpose)」での技術提供を拒否していたことにあります。

しかし、この Pentagon のリスク指定にもかかわらず、White House Chief of Staff Susie Wiles が個人的に NSA への供給を承認しました。これは政治的な判断介入を示唆しており、セキュリティと実務の間で揺れ動く米政府の姿勢を浮き彫りにしています。

新契約での「適法な用途」条項の除外

Anthropic の提供条件に変化が生じています:

  • 従来: 「あらゆる適法な用途」での提供を拒否
  • 新契約: この条項を除外、「米国国民のデータ処理を禁止する」条項のみ含有

これは Pentagon の指摘を一部受け入れつつ、セキュリティ上の懸念を絞ったものと考えられます。

Mythos の古いチップ対応——NSA の Grace Blackwell 不足に対応

Anthropic が開発する「Mythos」モデルは、より古い GPU チップ上で動作するよう設計されています。NSA を含む米政府機関は、Nvidia の最新チップ「Grace Blackwell」の供給不足に直面しており、Mythos はこの短期的な対応策として機能しています。

White House、チップ製造に 90 億ドル投資を決定

政府の長期的な対応として、White House は AI チップ製造に 90 億ドルの投資を承認しています。これにより、将来的には他国への依存度を低減し、政府 AI 能力の独立性を確保する方針が窺えます。

背景:超大国間の AI 競争と国内調達の戦略

Anthropic への供給承認、チップ製造投資、Mythos の古いチップ対応といった一連の動きは、米国が以下の課題に直面していることを示しています:

  1. AI 能力の確保: NSA・Pentagon などの機関が最先端 AI を必要としている
  2. 半導体依存の回避: Nvidia Grace Blackwell 不足への対応
  3. 政治的選択: セキュリティリスク評価よりも、実務的・戦略的ニーズが優先された
  4. 国内産業育成: 長期的には Anthropic、OpenAI など国内 AI 企業への依存度を高める戦略

Anthropic は Pentagon のリスク指定を受けながらも、White House と NSA という政治・戦略レベルの判断により、政府 AI サプライチェーンの中核的存在として位置付けられました。


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